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住職の日記

檀家制度をもっと身近に!檀家制度をアップデートするには

現代の日本人は特定の信仰宗教や宗教観を持っていないと言われています。
「自分は仏教徒だ」と意識している人は多くはないでしょう。

現状のこうした制度が根付いたのは、徳川幕府による政治的政策により始まった制度であります。
士農工商に属する人々の戸籍調査やキリシタン禁制を徹底を目的に、地域の寺院単位で人を管理するために取り入れられました。

今の時代に「檀家制度」と聞くと、
「お寺の行事や関わりが多くてめんどくさそう…」
「お布施など余計な出費がかかりそうでイヤ」
「檀家をやめるとき大変そう…」
など、残念なことにネガティブなイメージが先行してしまいます。

しかし、昔は信徒がある寺院に登録して、寺院に貢献することで、寺院は主に精神的な支援を提供するという、お互いに利益のあるシステムでした。

人と人、家族間のつながりが希薄化している今だからこそ、お寺と信徒さんたちの新しい檀家制度が必要になっているのではと思います。

今回は過去の歴史を振り返りながら、檀家制度の未来について考えてみたいと思います。

檀家制度とは?

身分保障制度も兼ねていた檀家制度

檀家制度は、日本の仏教において、寺院と信徒の関係を規定するシステムです。つまり、ある寺院に対して、信徒が檀家として登録し、その寺院に対して貢献することで、寺院が信徒に対して精神的な支援を提供するというものです。

檀家制度のメリットは、以下の通りです。

  1. お坊さんに相談できる
  2. 自分自身や家族の心の安寧を守り、また死後も寺院に供養してもらえる
  3. 寺院から精神的な支援を受けることができる
  4. 寺院に対して貢献することで、寺院の維持や修繕などに貢献することができる
  5. 同じ信仰を持つ方々のつながりの中に入れる

豊臣秀吉によりキリシタン禁止令が出た後、「寺請制度」といい、武士や町民、農民を問わず、身分を問わず特定の寺院に所属し、その寺院の住職が自らの檀家であるという証明として「寺請証文」を発行していました。
つまり、当時は国民全員が檀家=仏教徒だったのです。

「寺請制度」は今でいう戸籍台帳のようなもので、寺請けを受けない(受けられない)人は、キリシタンのレッテルを張られて弾圧されたり、身元の不確かな人として社会的権利を否定されたりしたのです。檀家制度とは、地域の一員として暮らしていくための身分保証の意味も兼ねていました。

檀家制度の歴史

「寺請制度」として定着した「お檀家さん」の歴史は江戸時代ですが、檀家制度自体の歴史は実はもっと古いものでした。
檀家という言葉は、サンスクリット語の「ダーナパティ」というが由来といわれており、もともとは「お寺や僧侶を支援する」という意味があります。

仏教は奈良時代に伝来し、「蘇我氏」と「秦氏」などの氏族が寺院を建立し、仏教を保護し、国家を守護する宗教として栄えます。また、当時の仏教寺院は国家の宗教権力としての側面を持っており、地方の豪族や有力者たちも寺院を新たに建立したり保護することで、自らの権勢を誇示する側面がありました。

中世になると、武士階級による寺院支配が進むようになります。檀家制度は寺院と武士階級との関係を規定するものとして機能するようになる一方で、庶民の信仰の場、集いの場として機能するようになりました。

檀家制度の課題

先ほど紹介した「檀家であるメリット」は、精神的な安定だけでなくコミュニティでの身分を保証する大きな役割がありました。 他にも、現代のように各分野の専門家がいない当時は、家族の悩みも近所のもめごとも、お寺のお坊さんが解決してきました。現代に比べて、お寺やお坊さんが地域に貢献する役割も大きかったため、檀家制度に参加することは、私たちが思い描くよりもずっと大きな恩恵があったと考えられます。

しかし、現代では地域のコミュニティや働く環境が大きく変わり、法に基づいて身分保障が行われています。さらに、各分野ごとに頼れる専門家がいるため「なにかあったらお寺のお坊さんに相談しよう」ということもありません。

そのため、檀家として加入しているメリットは少なくなっているのに、お寺への貢献は以前と変わらず求められるため、檀家制度の負担の面のみが強調されているのかもしれません。
かつてのように、寺院と檀家がお互いにwin-winの関係を取り戻すことが、現在の檀家制度の課題であると考えています。

檀家制度のアップデート

社会や人々の考え方が変わっているのに、お寺の側の意識がアップデートしてこなかったことが「檀家離れ」や「宗教への無関心」を招いてしまったと考えてます。

しかし、私個人としては、檀家さんを集めるためにSNSで目立ったり、仏教とは違うビジネスを展開したりするのも違うかなと思っています。

鎌倉時代にも檀家を集めるために「現世利益」を掲げて、人気を集めるようとした寺院はありました。本来の仏教の教えとは遠い「現世利益」で信徒を集める姿勢に対し、同時代を生きた法然上人も

いのるによりて病もやみ、いのちも延ぶることあれば、たれかは一人として病み死ぬるひとあらん」(祈ることで病気が治り寿命が延びるなら、どこに死ぬ人がいるだろうか)

と否定的な態度をとっていらっしゃいます。

私が目指したいのは、本来のお寺の役割を現代に合わせたアップデートすることです。

具体的には…

  1. お坊さんに相談できる
    ➾より身近に感じられるよう、寺院とのコミュニケーションを活発化。オンラインでの対話なども活用し、相談しやすい環境をつくる。
  2. 自分自身や家族の心の安寧を守り、また死後も寺院に供養してもらえる
    ➾仏教行事や仏さまの教えをわかりやすく解説。仏さまの教えに触れることで死の不安や家族との別離の苦しさを軽減する。
  3. 寺院から精神的な支援を受けることができる
    ➾宗教的な問題だけではなく、問題解決の窓口となり檀家さんをサポートする。必要によっては各種の専門家をご紹介するなど問題解決の手助けを行う。
  4. 寺院に対して貢献することで、寺院の維持や修繕などに貢献することができる
    ➾寄付で本堂を改修し地域活動の拠点になった」「寄付が社会貢献活動の資金になった」など、お寺だけがトクをするのではなく、社会に還元できる仕組みをつくる。
  5. 地域のつながりの中に入れる
    ➾お寺を中心にしたコミュニティをつくり、どなたでも参加しやすい環境を整える。

他にも「檀家」という家単位のおつきあいから、個人単位のゆるやかなつながりをもつコミュニティの形成など、できることはまだまだたくさんありそうです。
十念寺でも、地域のコミュニティ作りのお役に立てればと、介護の悩みを分かちあうための『ひとやすみカフェ』を定期的に開催しています。

「大変だな…」とは思いますが、大きな可能性とやりがいを感じています。

十念寺の檀家様を募っています

十念寺はまだ新しいお寺で、檀家さんの数も多くはありません。 だからこそ、通例やしがらみに捕らわれない新しいお寺と檀家さんの関係を作っていけると思っています。

十念寺のテーマは「お寺ともっと自由なおつきあいを」です。

✓受け継がれてきた仏さまの教えをもっと身近に感じたい
✓心の交流の場を探している方
✓ちょっと話を聞いてもらいたい・相談したい

などとお考えの方に気軽に参加いただける「檀家」様(年間5,000円)を募っております。
ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。