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住職の日記

お坊さんになりたい方へ

はじめに

十念寺は浄土宗の国内開教寺院として、令和三年に活動をはじめました。 私自身も、会社員から僧侶を目指して今があります。

そんな経緯から「僧侶になるにはどうすればよいですか?」というご質問をいただいておりますので、私の体験も交えてご紹介したいと思います。

十念寺住職 私が僧侶を目指したきっかけはこちら

浄土宗僧侶の資格の種類

浄土宗僧侶の資格は3つに分類されています。

宗徒

宗徒とは、僧侶になるための準備段階を指します。この時点では、まだ正式な「僧侶」として活動することはできません。見習いや弟子という立場にあたります。

助教師

助教師検定に合格した上で、別開五重相伝を授かった者の資格です。

助教師の資格を得ると、僧侶を名乗ることができるようになります。 葬儀の導師を勤めることはできませんが、年忌法要を勤めたりするなど住職の補佐をします。

教師

お寺の住職になることができる僧侶の資格です。 お葬式や法事を取り仕切り、助教師や宗徒を導く立場です。

総本山知恩院 または 大本山増上寺が開催する伝宗伝戒道場に入行し、浄土宗の「宗脈」と「戒脈」を伝授されることにより、正式な浄土宗教師(僧侶)となります。

宗門子弟と在家出身

寺院で生まれ育ち、寺院の後継者になる方を「宗門子弟」とよびます。 一方、寺院の出身や関係者ではないが、浄土宗の教えに感銘を受け浄土宗教師を目指すという方もいます。そうした方を「在家出身」とよびます。

浄土宗では、宗門子弟を対象にした講座などを開設しています。そのため、宗門子弟は若いうちから浄土宗の教義や作法に触れる機会がありますが、浄土宗教師への道のりは在家出身者と変わらないものとなります。

浄土宗教師への道のり

  1. 師僧を決める
    浄土宗教師の資格を持つ人であれば誰でも師僧になることができます。( 教師資格取得から10年又は住職就任後5年間の経過後) 師僧には、責任を持って弟子を僧侶として育成しなければなりません。

  2. 得度する
    得度とは仏門に入ることです。師僧または本山で「得度式」を行います。

  3. 度牒(どちょう)授与および僧籍登録の申請を行う
    「度牒」とは、得度したことの証明書です。 得度した後、「度牒」と浄土宗僧侶としての籍を登録する「僧籍登録」を、僧名(浄土宗僧侶としてふさわしい漢字二文字)で申請します。 申請者は師僧であり、申請先は宗務総長です。

  4. 伝宗伝戒道場(加行─けぎょう)への入行資格を得る
    高校卒業後、単位を履修できる大正大学(東京)、佛教大学(京都)で、科目・課程を履修します。大学へ通う以外にも、佛教大学の通信課程で単位を取得することも可能です。 科目は浄土学概論、選択集、浄土宗史、仏教学概論、仏教史、宗教法制、実践仏教学、同和教育概論などがあります。

 また、大学とは別に教師養成道場へ通うという方法もあります。宗門大学へ進学しなかった方やお寺に婿に入られる方、社会人となってから僧侶を目指す方などを対象とする教師養成のシステムです。 夏に3週間各大本山で道場が開催され、所定の修行を修めます。大学の1年間分の履修を3週間で行うため、日頃から師僧の指導や鍛練が大切になります。

ここまでして、ようやく伝宗伝戒道場への入行の資格を得たこととなります。    

  1. 伝宗伝戒道場を成満(じょうまん=修了)する
    道場は、総本山知恩院と大本山増上寺において、毎年12月に3週間の期間で開かれます。 朝から晩までみっちりのスケジュールで、集中的な学習と修行、儀式が行なわれます。 道場生活では、スマホやゲームなどの娯楽品の持ち込みは禁じられており、テレビなども見ることができません。俗世とは切り離された環境で、他の道場生と共同生活を行い修行に打ち込みます。
  1. 僧階(教階・学階)を取得する
    伝宗伝戒道場を終了した後、宗務総長に申請して僧侶の各資格を得ることができます。 宗門子弟の場合は、後継者としてお寺を継ぐことで住職になるのが一般的です。それ以外の場合は、跡継ぎのいなくなった寺院の後継者に推薦してもらう、大きなお寺に勤務する または自ら寺院を開いて住職になるなどがあります。

お坊さんを目指す方に考えてほしいこと

教師資格を得る過程は宗門子弟も在家出身者も変わりはありません。 しかし、在家出身者にとっての最初のハードルが師僧を決めることです。

師僧は、弟子の育成に生涯にわたり責任を持つ立場です。弟子が僧侶となってからの後見人の役割も果たす務めがあります。ある意味では、実の親子以上の関わりになります。 そのため、師僧にとっても弟子にとっても大きな決断が求められます。

「師僧になっていただきたい」とお願いをする前に、次のことについてよく考えてください。

1.なぜ浄土宗の僧侶になりたいのか

数多い宗派の中で、なぜ浄土宗を希望するのか。また、なんのために僧侶を目指すのか。 ご自身の考えを明確にすることが必要です。 ごくまれに、「仏教に興味がある」「仏教の修行を通して自分を成長させたい」という方がいらっしゃいます。しかし、それならば僧侶ではなく、1人の信徒として良い師とご縁を持ち、ご自身のペースで研鑽されることをおすすめします。 僧侶としての道を志すならば、ご自身のことだけでなく社会とのかかわりの中で、浄土宗の布教と伝道に励むという決意が必要になります。

2.収入を得る手段について

僧侶の資格を得たからと言って、必ずしも収入を得られるとは限りません。檀家数の少ない寺院では、住職が他に職業をもち、そこで得た収入を寺院維持のために充てているというケースも少なくありません。世間では「宗教法人は非課税だから儲かっている」というイメージがあるかもしれませんが、そうした寺院はごく一部であることも理解しておく必要があります。

とくに、在家出身者が個人的な収入を目的に活動しても、僧侶や浄土宗寺院に対する信頼を低下させるだけとなるでしょう。また、短くない修行期間の生活費・学費・法衣などの費用は自己負担です。その間の収入はほとんどないことを覚悟しなくてはなりません。

3.勉学と修行を全うできるか

浄土宗は他力門ですので、他の宗派と比較すると修行は厳しくないかもしれません。しかし、**「4. 伝宗伝戒道場(加行)への入行資格を得る」「5. 伝宗伝戒道場を成満する」**においては、現代の生活に馴染んだ身には十分厳しく感じられることでしょう。それに耐えられる身心が求められます。( 2時間程度の正座や数千回の礼拝を行います )

また、すでに社会人として仕事を抱えている方にとっては修行期間中の休みを確保できるのかという問題もあります。

4.僧侶の資格を得たあとどうするのか

修行の末、ようやく教師資格を得たあとのことも考えておかなくてはなりません。資格取得後、すぐに宗教活動に専念できるかというと必ずしもそうではありません。

宗門子弟の場合は、実家のお寺で働くことができますが、在家出身者は、教師資格を得た後の進路が保証されていません。

師僧が、あなたの活動場所を与えてくださるかも大きなポイントとなります。師僧のお寺で働かせてもらう、または他の寺院をご紹介いただけるかなどは、修行への打ち込み方やあなたの人柄によるといえるでしょう。


在家出身の私の場合は、幸運にもすばらしい師僧とのご縁をいただくことができました。

師僧とのご縁がなければ、僧侶を本気で目指すことも、宮城県初の開教寺院を開くこともなかったことでしょう。

とくに在家のご出身の方が僧侶を目指すには、厳しい道のりが待っています。 これらのことを、ご理解いただいたうえで僧侶を目指したい方がいれば、心から応援したいと思っております。 浄土宗の教師(僧侶)を目指したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。