秋の仏教行事「十夜法要」こんにちは、10月に入りようやく過ごしやすい気候になってきました。 寒暖差が激しい季節ですので、体調管理にはご注意ください。 さて、10月から11月にかけて、各地のお寺で「十夜法要(じゅうやほうよう)」が営まれます。 正式には「十夜法要」といい、旧暦の10月5日から文字通り10日間、昼夜にわたってお念仏を唱え続ける法要として伝えられています。 古くは「お十夜」、「十夜講」などとも呼ばれています。 かつては、風習のとおり昼夜を問わず10日間続けて行われていましたが、現代では日程を短縮して務める寺院が多いようです。 今回は十日十夜にわたってお念仏をお唱えする浄土宗の重要な仏教行事のひとつ「十夜法要」についてお話していきます。 十夜法要の歴史「十夜法要」の起源は、室町時代に遡ることができます。京都の天台宗の真如寺(真正極楽寺)で始まりました。「お十夜」というのは、十月六日から十五日までの十日間に、阿弥陀様が衆生を救済してくださるご恩に対する感謝の法要です。 後土御門天皇の勅許により鎌倉・大本山明光寺で修されて以来、各地の浄土宗寺院にも広まりました。「阿弥陀様におすがりする」ということから、浄土系の寺院の教えと合致することから、今でも浄土宗のお寺の秋の一大イベントとなっています。 余談ですが、京都の真如堂でのお十夜は、その法要期間中に、門前で蛸(たこ)を売り、これを食べると疫病から逃れられるという言い伝えから、「蛸十夜」と言われています。」 浄土宗と十夜法要さて、「十夜法要」の起源になったのは、浄土宗で大切にしているお経のひとつ「無量寿経(むりょうじゅきょう)」にある以下の一説です。
これは、煩悩の多い世界に生き日々忙しく過ごしている私たちが善行を修めることは、煩悩から開放され環境の整った仏さまの国で善行を修めるよりさらにありがたいということを表しています。 また、別のお経には「もし南無阿弥陀仏の名号を十日十夜にわたって念仏三昧に精進すれば、阿弥陀様を見ることができるであろう。また、必ず安楽国に往生できるであろう」と書かれています。 そのため、「十夜法要」は、信者たちがこの世での修行の価値を深く理解し、仏の国土での修行の重要性を再認識する機会として浄土宗では重要な位置づけをされています。 十日十夜なにをしているの?浄土宗ではお念仏をおとなえすることを最大の善行としています。十夜法要では、僧侶と信者の方が集まり声を合わせて「南無阿弥陀仏」とお念仏をおとなえし続けます。 また、お寺によっては僧侶と参列者が輪になって座り、大きな数珠を手繰りながらお念仏をとなえるお寺もあり「百万遍念仏(ひゃくまんねんぶつ)」と呼ばれています。無病息災などの祈願や、阿弥陀さまへの感謝の意味が込めておこなわれています。
自然の恵みへの感謝も十夜法要が行われるのは、秋の収穫期でもあります。ちょうど稲刈りも終わった時期でもあり、自然の恵みへの感謝を捧げる意味で、仏前には新米やおはぎ、赤飯の他、秋の実りをお供えします。かつては、大勢で持ち寄った食べ物をみんなで分け合って食べる習慣がありました。供えられた穀物でお粥を作って食べ、楽しく過ごす地方もあり「十夜粥」と呼ばれています。 十日十夜、お寺に寝泊まりして行う地域では「十夜婆々」ということばもあります。十夜法要に参加する高齢・中年のご婦人の方々の表現したおもしろいことばですね。きっと、忙しい農作業からひととき解放され、みんなで楽しくすごしていたのではないかと想像します。 かつては、お米もおはぎの材料になる小豆や砂糖もとても貴重でした。そのような食材を仏さまとご先祖にお供えし、そのあとは集落の仲間で食べる十夜法要は一年の中でも楽しい時期だったのではないでしょうか。 「十夜法要」は、浄土宗の信者たちにとって、仏教の教えを深く学び、日常生活の中での仏教の実践の重要性を再認識する大切な行事です。この法要を通じて、信者たちは仏の教えを深く理解し、日常生活の中での仏教の価値を再認識します。 まとめ鎌倉時代に、全国の浄土宗の寺院に広まった「十夜法要」は、この世で善行を積むための大切な行事です。十日十夜の間、念仏の修行をすることによって極楽浄土に往生することを願うこの行事は、浄土宗の教えと合致することもあり、現代でも続います。 ここまで長く続いてきたのは、自然の恵みを一番感じられる秋の時期に開催する要因も大きかったのではないかと考えます。昔の人たちは日々の生活の中に、仏さま、自然、ご先祖に向ける尊敬や感謝の気持ちを持ち続けていました。 なにかと忙しく、季節を感じるゆとりがない方も多い現代ですが、過ごしやすくなってきた秋に一度立ち止まって、仏さまや自然、ご先祖さまへの感謝の思いを込めて、「南無阿弥陀仏」と唱えてみませんか? |
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