022-702-8651
受付時間 9:00~18:00

zyunenzi@gmail.com

住職の日記

『涅槃会』はお釈迦さまのご命日

あっという間に、1月が終わり2月に入りました。

昔から「一月往ぬる二月逃げる三月去る」といいます。

お正月から三月までは行事が多く、あっという間に過ぎてしまうこと表現しています。

そんな慌ただしい中でも、2月15日には仏教の「三仏忌(さんぶっき)」のひとつ「涅槃会」があります。

以前にご紹介した、お釈迦さまが悟りをひらいた日である「(じょうどうえ」)やお釈迦さまのお誕生日にあたる「花祭り」と並ぶ大切な行事です。

今回は2月15日に行われる「涅槃会」についてお話していきましょう。

涅槃会はお釈迦さまが亡くなられた日

お釈迦さまの入滅に関しては様々な説があります。定説となっているのは紀元前500年頃にクシナガラと言われる地で80歳の生涯を閉じられた説です。

菩提樹の下で悟りをひらいてから亡くなるまでの約45年の間、人々に仏さまの教えを説きながら弟子とともに伝道の旅を続けてこられたのです。

お釈迦さまが80歳を迎えたころにご自身の死期が近いことを悟り、3カ月後に入滅することを弟子たちに告げました。そしてその通り3か月後に現在のインドのウッタル・プラデーシュ州東端のカシア付近の村「クシナガラ」で入滅されました。

亡くなる際に、集まった弟子たちに
「比丘たちよ、今こそおまえたちに告げよう。諸行は滅びゆく。怠ることなく努めよ。」
(ものごとは移り変わってゆく、怠けることなく精進しなさい)

と、言葉を残したとされています。

たくさんの人を導いてくださったお釈迦さまの入滅の日は、お釈迦さまにゆかりのある大切な忌日である「三仏忌(さんぶっき)」のひとつとして数えられています。

涅槃会が2月になった意外な理由

お釈迦さまの歩んだ道や教えが細かく伝えられていますが、じつはお釈迦さまの命日ははっきりとは伝わっていません。

南伝仏教では、お釈迦さまは「ヴァイシャーカ月の満月の夜に亡くなられた」とされています。
南方の仏教を信仰する国々では、ヴァイシャーカ月にあたる5月の満月の日に涅槃会を実施しています。

『ヴァイシャーカ』が「第2の月」という意味を持つことから、中国では「お釈迦さまが亡くなったのは2月」と伝わったようです。

中国から仏教が伝わった日本でも、同様に2月に涅槃会が行われるようになりました。
(現在は新暦で数えていますが、もともとは旧暦の2月15日でした。今年の暦に換算すると3月6日になります)

涅槃会に欠かせないのは「仏涅槃図(涅槃図)」

涅槃会での法要は、お釈迦さまが沙羅双樹の下で涅槃に入った際の、頭を北にして西を向き右脇を下にした姿で臥し、周囲に十大弟子をはじめ菩薩さまや他の宗教の神さまも集い、動物や虫類などまでが嘆き悲しむさまを描いた仏涅槃図(涅槃図)を掲げ、『仏遺教経』や『舎利礼文』を読誦するのが習わしです。

日本では京都市の泉桶寺が所蔵している縦約16m、横約8mもある涅槃図が有名です。
お寺の壁の高さよりも長いため、コの字型に曲げたまま一般公開していことでも有名ですね。

御寺泉涌寺の涅槃図/御寺泉涌寺様WEBサイトより

涅槃図はふだんは非公開になっていることも多く、涅槃会は貴重な仏教美術を見られる貴重な機会でもあります。

お釈迦さまの涅槃の姿から発生したもの

お釈迦さまが頭を北に、お顔を右に向いている姿を「頭北面西(ずほくめんさい)」と言います。

日本で、亡くなった方を北向きに寝せる「北枕」の風習は、この故事からきているそうです。

亡くなった方と同じ方向を向くから「北枕は不吉」と考える方もいますが、お釈迦さまの涅槃のお姿が由来と知るとそれは間違いだとわかりますね。

お顔を西に向けたのは、夕日に向かって祖先の霊を拝むためとも、西方にあるという極楽浄土を向くためともいわれています。

浄土宗の開祖である法然上人も往生の際には、お釈迦さまと同じく「頭北面西」のお姿であったと伝わっています。

浄土宗では、太陽が沈む西方に阿弥陀如来の住まわれる極楽浄土があるとして、西方を拝むことを大切にしています。

こういった現代の風習や宗教観にまで、お釈迦さまの最後のお姿が影響を受けていると思うと驚くばかりですね。

まとめ

お釈迦さまの最後のお姿やお言葉が詳しく残されているのに、ご命日は明確でないのが意外ですね。
それゆえ南方仏教では5月に、中国や日本では2月にお釈迦さまが亡くなったことを偲んで行われる大切な法要である「涅槃会」が行われるようになりました。

ご命日こそ不明ではありますが、涅槃像や涅槃図は世界中で制作され仏教美術を代表するモチーフとして今日まで伝えられています。

涅槃図に描かれているように、お釈迦さまの死をたくさんの人が悲しんで迎えたことでしょう。
しかし、この世での命を終えたこと(入滅)により、お釈迦さまが身体的な苦からも脱して完全な「涅槃」に至った記念すべき日とも考えられます。

なにかと忙しい月ではありますが、今月2月15日はお釈迦さまの波乱万丈な人生に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

関連記事

12月8日は「成道会」