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住職の日記

心を穏やかにする春彼岸の過ごし方

春の訪れと共に、自然は息を吹き返し、桜の花が開き始めます。 冬から春にかけての季節の変わり目には、「春彼岸」という特別な期間があります。

春彼岸は、春分の日を「中日」とした前後3ずつの7日間の期間で、この時期にご先祖様への供養のためにお墓参りをするのが一般的です。

今回は、春分の日が特別な理由と春彼岸にご先祖を供養する理由を考えてみましょう。

なぜ春分の日は祝日になったのか

春分の日が国民の祝日に定められたのには大きな2つの理由があります。一つ目は天文学的な理由で、二つ目は文化的・歴史的な背景に基づいています。

天文学的な理由

春分の日と秋分の日は、太陽が天球上で赤道を横切る瞬間、つまり昼と夜の長さが全地球でほぼ等しくなる特別な日です。

この現象は、地球の傾斜と公転によって生じ、季節の変わり目を示しています。春分の日は新たな春の訪れを象徴し、自然界のバランスと調和、そして新しい季節への移行を祝う日とされています。

文化的・歴史的な理由

日本では古来より、春分の日と秋分の日は「彼岸の中日」と位置づけられ、先祖を祀る習慣がありました。宮中では、春分の日「春季皇霊祭」を、秋分の日には「秋季皇霊祭」という天皇陛下と皇后陛下が国民の幸せを祈る「宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)」が行われてきました。

法律によると、国民の祝日は美しい風習を育てつつ、よりよき社会、な生活を築くために定められ「国民こぞって祝い、感謝し、記念する日」として、年間で16日が祝日と定められています。

ちなみに、『国民の祝日に関する法律』によると、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として、秋分の日は「先祖をうやまい、亡くなった人々をしのぶ」日として記載されています。

「夏至」や「冬至」は天文学的に特別な日でありながら祝日にはならず、「春分の日」と「秋分の日」が祝日に制定されました。これは、昼と夜の調和がとれる天文学的に特別な日であり、日本の古来からの風習や宮中祭祀を実施する日であるからと考えられます。

春分の日は仏教でも大切な日

神道でも特別な日とされる「春分の日」は、仏教においても大切な日とされています。

春分の日は、太陽が真東から登り、真西に沈みます。 仏教では、西の最果てには阿弥陀仏の仏国土があり、沈む夕日を見て仏の国を観想する「日想観」という修行をするのに最も適した期間とされています。

「日想観」とは、西の空に沈む夕日を見ることで、心を西方極楽浄土に向け、阿弥陀仏を想う修行です。西に沈む太陽を眺めながら、心を静かにして阿弥陀仏の仏国土を思い描く。この瞬間、私たちは日常の忙しさから一歩離れ、内なる平和を感じることができます。

浄土宗では、娑婆世界(此岸)に生きながら、心を浄土(彼岸)に向けて修行することが大切とされています。春彼岸の期間は、まさにこの教えを実践する絶好の機会。極楽浄土にいるご先祖様に想いを馳せることで、私たち自身も精神的な成長を遂げ、日々の生活においてもより良い心持ちを持つことができると考えられてきました。

自然の調和がとれた日に、穏やかな心で過ごすことが功徳となるとされています。

春彼岸はどうやって過ごすがよい?

「彼岸」の季節は、この世(此岸)とあの世(彼岸)が最も近くなる日と信じられています。この期間は、極楽浄土にいるご先祖様に想いを馳せる大切な時。日々の忙しなさの中で忘れがちですが、私たちが今こうして生きているのは、無数のご先祖様が築き上げた歴史と努力の上にあります。春彼岸には、そんなご先祖様への感謝の気持ちを新たにし、お墓詣りやお仏壇に手を合わせましょう。

お墓参りや法要への参加は、家族みんなでご先祖様を偲び、共に過ごす大切な時間でもあります。このような行事を通じて、私たちは互いに支え合うことも大切にしたいですね。

春彼岸を経て、心新たに

国民の祝日には、1月1日の「元日」、2月11日の「建国記念の日」のように日にちが固定されているものもあれば、「海の日」や「敬老の日」のように、「○月の第○月曜日」と定められ、毎年連休になるように定められているものもあります。

かつては、1月15日に固定されていた「成人の日」は、平成12年に「1月の第2月曜日」に改正されました。3連休を取りやすくする目的での変更だったため、当時も現代人の都合で祝日を変更するのはどうなのか?という意見もありました。しかし、元旦も建国記念日も「人が決めた祝日」ではあります。

その点、春分の日と秋分の日は、法律に具体的な月日は定められておらず、国立天文台が毎年2月に公表する暦要項により、翌年の春分の日と秋分の日の日にちが確定します。いわば、自然が決定する日なのです。

自然や神仏など、人知を超えたものに対する敬意を持ち、謙虚な気持ちで過ごしたいものですね。 今年の春彼岸が皆さんにとって心温まる、意義深いものとなりますように願っております。 心を穏やかにして、新しい季節の訪れを楽しんでください。