お釈迦さまの教え「五戒」仏教には、仏教徒としての生活の規範となるお約束事として「戒」があります。その中でも、最も重要とされるのが「五戒」と呼ばれるものです。 「五戒」は、お釈迦さまが求道者としての生活を送っていた時代に、弟子たちに対して説かれたのが起源とされています。 仏教が生まれた約2500年前の古代インドの社会は、階級制度や戦争、貧困といった多くの問題に悩まされており、人間の苦しみの原因となっていました。 お釈迦さまは人々の苦しみから解き放つ方法を模索し続けました。長い模索の結果、お釈迦さまは「四苦八苦」を説き、生老病死や愛別離苦、求不得苦、五陰盛苦といった人間の苦しみを明らかにしました。そして、その苦しみから解放されるための道を示すためにとかれたのが「五戒」だったのです。 五戒は単に「○○をしてはならない」という、私たちの行動を規制するものではありません。 五戒の内容を知っていただければわかる通り、普遍的な倫理的価値でもあります。 五戒で守るべきこととは?五戒とは、「不殺生戒」、「不偸盗戒」、「不邪淫戒」、「不妄語戒」、「不飲酒戒」の五つの戒めを指します。 ここでは、五戒の戒めの内容を1つずつ確認していきましょう。 1. 不殺生戒「生きものを殺してはいけない」 2. 不偸盗戒「人のものを盗んではいけない」 3. 不邪淫戒「邪(よこしま)な男女関係はいけない」 4. 不妄語戒「嘘をついてはいけない」 5. 不飲酒戒「酒に溺れてはいけない」 改めて内容を見ていくと、現代社会においても共感できる基本的な道徳であることが理解できますね。仏教での正式な「五戒」はもう少し厳格な内容ですが、個人的に現代的に解釈すればこの様に受け止めても良いかと思います。 現代の価値観で考える「五戒」五戒は、古代インドの社会で生まれたものですが、その普遍的な価値は現代においてもそのまま適用できます。現代社会で起きている問題に対しても、五戒の教えに解決策を見出すこともできるでしょう。 たとえば、「殺生をしない」は、生命を尊重し、暴力を避けるという原則を示します。戦争や暴力、さらには環境破壊や動物虐待といった行為への反対の姿勢を示すものとして解釈されます。 「偸盗をしない」は、他人の所有物を尊重し、公正さと誠実さを重んじることを意味します。情報化やデジタル化が進んだ現代では、物理的な盗みだけでなく、知的財産権の侵害や情報の不正利用といった行為も含められるでしょう。 性的な関係における倫理規範を示す「不邪淫戒」も、改めて考えなくてはいけない問題です。 これまで見過ごされてきたセクシャルハラスメントや性的な乱れに対して、社会全体で取り組むべき課題です。 「妄言をしない」は、真実を語ること、他人を欺かないことを求めています。SNS上のフェイクニュースや誤情報の拡散、他人を誹謗中傷する行為に加担しないことや、ネット社会全体が正しい認識を持つ重要性に通じます。 また、五つ目の「酒毒を飲まない」は、酒や薬物により自我を失くしてはならないと解釈できます。健康と清明な心を保つための、アルコールや薬物の適切な管理を求められます。お酒や薬物に限らず、ゲームやスマホ依存症など自制ができないほどのめり込むことについても警鐘を鳴らしています。 五戒を守ることの意義「五戒」の教えは、自分自身だけでなく、他者を尊重することにもつながります。 「一は全、全は一」という言葉があります。 「五戒」はシンプルな価値観ですが、私たち一人ひとりの人生や、社会全体を良い方に導いてくれる教えだと思います。 まとめ現代における「五戒」とは、私たちの行動を縛るものではなく、人として気を付けなくてはならない戒めであり、日々の生活を心穏やかに暮らすための約束事です。 |
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