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住職の日記

仏教美術から感じる浄土宗の教え

私たちは、さまざまな形の美術に触れることが出来ます。絵画や彫刻物など様々な作品がありますが、それらはただ美しいだけでなく、文化や思想を通じて私たちの世界を豊かにする力を持っています。
熱心な仏教徒という認識はなくとも、仏像や仏教絵画に魅力を感じる人も多いでしょう。

今回は、その中でも浄土宗関係の深い仏教美術について考えてみたいと思います。

浄土宗の教えとは

仏教美術も宗派の宗教観により、さまざまに発展してきました。
浄土宗の仏教美術を語るために、浄土宗の宗教観についても少しおさらいしておきましょう。

浄土宗の起源

浄土宗は、鎌倉時代に法然上人によって開宗(西暦1175年)された宗派です。
法然上人は、お釈迦さまの教えをもとに「南無阿弥陀仏」(お念仏)を称えることで、誰でも阿弥陀仏の浄土に生まれ変わることが出来ると云う教えを示されました。

これを専修念仏といいます。
どんな過去を背負っていようとも阿弥陀仏の救いを信じ、阿弥陀仏の御名を称えることで、誰でも極楽浄土に生まれ変わることができるという教えです。

この法然上人がお示しくださったお念仏の御教えは、平安時代末期から鎌倉時代より社会的な不安や苦しみを抱えた人々に対し、心のよりどころとなりました。
そして、身分や教養を問わず幅広い人々に支持され、来年の令和6年には開宗850年を迎えます。

浄土宗の美術の特徴

古くから宗教美術は、その信仰や信者の救済・修行の助けとなるのを目的に作られてきました。キリスト教の教会のステンドグラスは、まだ文字が読めない人が多かった時代にキリストさまの教えを伝えるために作られていたのは有名な話です。

仏教美術も同様に、仏教信仰の表現や極楽浄土の具現化のためにさまざまな作品が作られました。 また、仏像を作る、仏画を描くという行為自体も修行のひとつと考えられてきました。

浄土宗の仏教美術の特徴としては、阿弥陀仏や極楽浄土を表現した作品が多いことです。法然上人が活躍した平安時代から鎌倉時代にかけて大きな発展を遂げました。 代表的な作品には、平等院鳳凰堂の阿弥陀三尊像や西本願寺の阿弥陀如来像があります。

次の項では、浄土宗の美術についてお話していたいと思います。

浄土宗のご本尊に「立像」が多い理由

浄土宗のお寺では、阿弥陀如来を表現した座像よりも、立像を本尊として祀ることが一般的です。
有名な立像としては、京都にある「百萬遍知恩寺」に安置されている「阿弥陀如来像」などがあります。

阿弥陀如来立像:鎌倉時代

阿弥陀堂の本尊としてまつられている阿弥陀如来像。服制、爪が長く、肉髻が低い等の容姿から、鎌倉時代に流行した中国、宋風の姿とわかります。


京都 百萬遍知恩寺
 より


阿弥陀さまのお力を信じることで、救われるという教えを説く浄土宗では仏様の立ち姿が重要なポイントです。立像は、仏様が私たちの世界に積極的に関わり、苦しみから解放するためにやって来たことを象徴しています。

浄土宗のお寺では、 阿弥陀さまが自らを救済するために降臨してくださることを強烈な視覚的メッセージとして伝えるため、立像を本尊として祀ります。

浄土宗の信仰の中心「阿弥陀三尊像」

阿弥陀三尊像は浄土宗の信仰の中心とも言えるものです。それでは具体的にどのようなものなのか見ていきましょう。

阿弥陀三尊像の意味

阿弥陀三尊像と言えば、阿弥陀如来を本尊(中央)とし、観音菩薩(向かって右)と勢至菩薩(向かって左)を両脇侍とします。観音菩薩像は蓮の蓮台を持っているお姿で、勢至菩薩像は合掌をされているお姿であらわされていることが多いようです。また、この三尊が一体となった仏像があり、一光三尊形式と言われるものです。


この形式のご本尊は、有名な『長野県善光寺』の御本尊としてお祀りされています。
善光寺式阿弥陀三尊とも呼ばれ、全国各地で同様のご本尊がお祀りされていますがこれは善光寺の阿弥陀三尊像を模したものです。

観音菩薩と勢至菩薩とは?

阿弥陀如来を中心に両脇に配される観音菩薩と勢至菩薩の役割をご紹介しましょう。
観音菩薩は慈悲の化身であり、人々の苦しみや願いにこたえて救いの手を差し伸べる菩薩さまです。
勢至菩薩は智慧の化身で、人々を仏の智慧で導いてくださる菩薩とされています。

理想の浄土を描く浄土図

重文 浄土曼荼羅図
(当麻曼荼羅図)
京都・知恩寺

浄土図は、浄土宗信者が理想とする極楽浄土を具象化したものです。
阿弥陀如来の極楽浄土を描いた絵は、阿弥陀浄土曼荼羅と呼ばれ、阿弥陀如来やその眷属、極楽に往生する人々などが描かれています。

浄土図には浄土宗の教義が深く結びついています。
とくに、阿弥陀如来の救済や、極楽浄土への希求などを表す絵が多くあります。これらの描写を通じて、当時は難しいお経や書物が読めない信者でも 浄土宗の教義をより理解することができました。

現代でも、盂蘭盆会に浄土絵の図柄やストーリーを僧侶が解説する行事があるお寺もあります。

まとめ

今回は、趣向を変えて浄土宗の仏教美術について解説してまいりました。
仏像や絵画などの仏教美術を通じて、浄土宗の教義を具現化し理解することは、言葉だけで教えを理解するのとは違った深い理解をもたらします。

人が創ったものですが、そこには確かな信仰心が込められており、あたかも仏教の理想の世界が目の前に広がっているように感じることもあります。

こうした作品に触れることで、頭で理解するよりも感覚で浄土宗の教義を感じられます。
むずかしいことはわからなくても「すごいな」「ありがたいな」と感じられるだけでも、仏教の核心に近づけるのではないかと思っています。

仏教美術に触れる際には、技術や技巧に感心するだけでなく、そこに込められた信仰心や表現された教えについても想いをはせていただければいいなと存じます。