厳しい寒さの中にも、少しずつ春の気配が感じられる季節となりました。
三月に入ると、私たちは「春彼岸」を迎えます。
お彼岸は、日本人にとって古くから大切にされてきた仏教行事のひとつです。この時期、多くの方がご先祖様を偲び、供養の心を新たにされます。
今回は、春彼岸の意味と、なぜこの時期に先祖供養をするのかについて、お話ししたいと思います。
令和8年の春彼岸はいつから?
春彼岸は、春分の日を中日として、その前後三日間を合わせた七日間です。
令和8年は、以下の日程となります。
春彼岸の日程
- 彼岸入り
- 3月17日(火)
- 中日(春分の日)
- 3月20日(金・祝)
- 彼岸明け
- 3月23日(月)
この七日間が、ご先祖様に想いを馳せる特別な期間となります。
此岸と彼岸が近づくと考えられてきたのか?
「彼岸」という言葉は、サンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜)」に由来します。
彼岸とは、煩悩や迷いのない悟りの世界、つまり極楽浄土のことを指します。
それに対して、私たちが今生きているこの世界を「此岸(しがん)」と呼びます。迷いや悩みを抱えながら生きる、私たちの日常の世界です。
春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さがほぼ等しくなり、太陽が真東から昇り、真西に沈む特別な日です。仏教では、西の彼方に阿弥陀仏の極楽浄土があるとされています。
そのため、太陽が真西に沈むこの時期は、此岸と彼岸が最も近づく時であり、ご先祖様のいる極楽浄土に想いを馳せるのに、最もふさわしい時期だと考えられてきました。
なぜお彼岸に先祖供養をするのでしょうか
それでは、なぜお彼岸の時期に先祖供養をするのでしょうか。
日本人ははるか昔から、亡き人を「もう関わりのない存在」とは考えてきませんでした。
姿は見えなくなっても、どこかで見守り、折にふれて思い出され、暮らしの中に静かに息づいている存在――それが、亡き人であったように思われます。
亡き人を思い、手を合わせるという行いは、特別なことではなく、人としてごく自然な営みであったのでしょう。
仏教では、いにしえより、亡き方が往かれる世界は西方にあると説かれてきました。
その世界は、清らかで美しく、苦しみのない、永遠の安らぎの世界とされ、極楽浄土(極楽世界)と呼ばれています。
春分・秋分の日には、太陽が真西に沈み、一年を通して、昼と夜の長さが等しくなります。
この自然の節目の時は、極楽浄土と私たちの世界――此岸とが、最も近づく時期と受け止められてきました。
夕暮れの西の空を眺めていると、沈みゆく太陽の光の向こうに、亡き人の行き先を重ねて思い描いた
先人の心が、今も感じられるように思われます。
だからこそ、お彼岸にご先祖さまを供養し、お墓参りをすることは、「しなければならない供養」ではなく、亡きご先祖さまから連なる命のつながり、そして家族のご縁を再確認する為に、大切にされてきた日本独自の行事なのでしょう。
先祖供養がつなぐ家族の時間
現代社会では、家族が離れて暮らすことも多く、日常の中でご先祖様のことを考える機会は、以前より少なくなっているかもしれません。
だからこそ、お彼岸という節目が大切なのだと思います。
春彼岸の法要に家族が集まり、共にご先祖様に手を合わせる。そうした時間は、ご先祖様への供養であると同時に、家族同士が顔を合わせ、お互いの近況を語り合う貴重な機会でもあります。
先祖供養は、過去に向けられるものであると同時に、今を生きる私たちのつながりを確かめ合うものでもあります。
また、供養することは、供養される側だけでなく、供養する私たち自身にとっても大きな意味があります。
ご先祖様に手を合わせ、感謝の心を持つことで、私たちの心は穏やかになり、日々の生活にも落ち着きが生まれます。仏教では、こうした心のあり方を「功徳」と呼びます。供養は、ご先祖様と私たち双方にとって、大切な行いなのです。
浄土宗の教えと極楽浄土
浄土宗では、「南無阿弥陀仏」と念仏を称えることで、阿弥陀仏が必ず極楽浄土に迎え入れてくださると説かれています。
極楽浄土は、苦しみも悲しみもない、安らぎに満ちた世界です。亡くなられたご先祖様は、その極楽浄土で安らかに過ごしておられます。
お彼岸の時期、私たちが念仏を称え、ご先祖様に想いを向けることは、極楽浄土におられるご先祖様との心のつながりを深めることでもあります。そして、私たち自身もまた、いつかは極楽浄土へ往生し、ご先祖様と再びお会いできる。そうした希望を持つことができるのです。
十念寺 春彼岸法要のご案内
十念寺では、下記の日程で春彼岸法要を執り行います。
ご先祖様への感謝の気持ちを新たにし、共にお念仏を称える時間を過ごしませんか?
ご家族お揃いでのご参加を、心よりお待ちしております。
- 日程
- 三月二十一日(土)
- 時間
- 午前十一時から
- 会場
- 十念寺本堂
- お布施
- お気持ちで(三千円〜一万円程度)
※当日は平服でお越しください。
※ご参加をご希望の方は、三日前までにお電話またはメールにてご連絡をお願いいたします。
※駐車場に限りがございますので、公共交通機関または近隣のコインパーキング等のご利用にご協力ください。
また、法要への参加が難しい方や、供養について相談したいことがある方は、どうぞお気軽に十念寺公式LINEからご連絡ください。住職の私が直接お返事いたします。
このお彼岸、仏壇の前で静かに手を合わせることや、ひと言「南無阿弥陀仏」と称えるだけでも、立派な供養となります。
春の訪れとともに、ご先祖様に想いを馳せ、心静かなお彼岸をお過ごしください。
合掌