みなさんは、ご当地の有名人やその人をモデルにしたキャラクターが全国的に注目されると、ちょっとだけうれしい気持ちになることはありませんか?
いま、巷では法然上人をモデルとするとあるキャラクターが話題になっています。 仏さま=ブッダそのものをモチーフにした漫画と言えば、古くは手塚治虫の『ブッダ』があり、最近ではアニメ化も実写化もされた『聖☆おにいさん』があります。
『聖☆おにいさん』は、20世紀(世紀末)を無事に乗り越えた、イエス・キリストとブッダがバカンスのために日本の立川でルームシェアするというギャグまんがです。まんがと侮ることはできません。
2人の聖人の宗教的なエピソードや、各宗教の聖人や偉人も登場するので、構えずに楽しく2大宗教に触れること人気の作品です。
さて、日本の宗教界でも弘法大師空海さまや、伝教大師最澄さまは創作物のモデルとしてよく登場します。昭和に子ども時代を過ごした方であれば、禅僧・一休宗純をモデルにしたアニメ『一休さん』を覚えていることでしょう。
でも、モデルとして取り上げられやすいのはよその宗派なんだよな…と思っていたところ、今年の冬、浄土宗の開祖である法然上人をモデルとしたキャラクターが大活躍ということなので、さっそくご紹介します。
法然上人をモデルとするのは日本屈指の初恋キラー
法然上人が「初恋キラー」?!と、私も驚きを隠せませんでした。 さて、法然上人をモデルにした話題のキャラクターとは、放映開始からすでに31年を迎えるNHKのEテレで放送中の長寿アニメ「忍たま乱太郎」の主人公たちの担任の土井先生です。
この土井先生が、アニメ放送開始以来「初恋キラー」として、小さな女の子たちの憧れのキャラクターとも言われているそうです。「初恋キラー」の所以は、「ハンサム、優しい、強い」の三拍子が揃っており、土井先生に淡い恋心を抱く小さな女の子が多いからだとか。
今年の12月20日には忍たま乱太郎の13年ぶりの映画が公開になり、映画雑誌のみならず、ファッション誌でも特集が組まれています。各雑誌の特集記事の内容を少しだけ紹介すると…
ダ・ヴィンチ
2024年12月号
私の初恋、土井先生
CUT
2025年1月号
いつも、心に刻まれている『忍たま乱太郎』は永遠に
アニメでは詳しく描かれてきませんでしたが、原作の漫画「落第忍者乱太郎」では土井先生の出自は法然上人をモデルにしたと作者の尼子騒兵衛さんが明らかにしています。
他にも映画のヒットを受けて、忍たま乱太郎や土井先生に関するネットニュースも多くあり、その中でも「土井先生のモデルは浄土宗の開祖である法然上人」と記されています。
共通点は豪族出身の苦労人
でも、ここで気になるのは法然上人がモデルなのになぜ、忍者の先生?ということです。
そこで、原作のまんが『落第忍者乱太郎』やテレビあにめ『忍たま乱太郎』について調べたところ、法然上人をモデルとするエピソードが見つかりました。
アニメの『忍たま乱太郎』は、ほのぼのした子ども向けのアニメの体裁をとっていますが、実はシビアな室町時代の戦国時代が舞台です。主人公乱太郎のクラスメイトのきり丸は、村ごと焼き討ちにあい家族を失い、生きるための技術を身に着けるためアルバイトをしながら忍術学園に入学したという設定があります。
アニメでは毎回「突然の思いつき」で騒動を起こす学園長先生も、実は戦が続く中で中立を保つほどの影響力がある伝説の忍者。そして、生徒たちを指導する先生たちも、歴戦の戦忍や剣士だったりとエリート揃いです。
その中で、先生の中でも最年少の土井先生は兵法と火薬のスペシャリストで教科担任を務めています。土井先生が教師になったのは、二十歳の頃。そのころには、当時最先端の火薬と、中国から伝わる兵法を究めていたので、若くして優秀な人物だったのでしょう。
室町時代の後期に高等教育を受けられる身分というとこから、法然上人と同じく元は地方の有力豪族の出身という背景が設定されました。
法然上人の半生
法然上人は、美作国の地方豪族の家に生まれ跡継ぎとして育てられました。しかし、9歳の頃に家が夜討ちにあい父の時国が亡くなってしまいます。武士の子としては、かたき討ちが当たり前の時代でしたが、父の遺言で仏門を目指すことになります。
当時の武士の子は生き残っていれば、命を狙われてしまう存在です。また、本人に敵討ちの意志がなくても将として担がれてしまい、再び戦火を広げることにもなりかねません。武士の子が安全に過ごすには、出家する以外に道がなかったとも言えます。
法然上人は、父の遺言通り仏門へ入ると頭角を現していきます。しかし、仏教界での地位よりも、仏の教えを求めて旅をして、ついには「専修念仏」にたどり着き、浄土宗を開きました。浄土宗を開いてからもたびたびの困難に合ったのはこちらの記事で解説の通りです。
▼法然上人の生涯については浄土宗のサイトでまとめられています
土井先生のひみつ
法然上人が活躍したのは平安時代末期、忍たま乱太郎の時代設定は室町時代後期と実は時代が異なります。しかし、どちらの時代も満足な読み書きができるのは、貴族か僧侶くらいのもの。若くして兵法や火薬に通じるほどの知識を得るには、幼い頃から高度な教育を受けられる立場にあったと推測されます。一族の滅亡までは、豪族の子息として、その後は法然上人と同じようにお寺で教育を受けたのかもしれませんね。仏教は修験道にも通じることから、お寺にいる頃に忍者としての修行もしたのではないかとも考えられます。
豪族出身のために名を隠し、さらに抜忍として名を隠してきた土井先生。
抜忍として追われていた土井先生を、救い教師の道へ導いた山田先生が「教師としては半人前」という理由で「土井半助」の名を与えたエピソードが、映画を前に放送されたアニメ32期で明かされて長年のファンも驚かせました。
12月公開の映画は、過去に発表された小説「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」が待望のアニメ映画化。
失踪した土井先生、戦好きのドクタケ忍者隊に現れたなぞの軍師。1年は組の忍たまたちは、土井先生を見つけることができるのか?!
ふだんのアニメでは見られない、シリアスな忍者アクションも話題の映画「劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」は絶賛公開中です。
土井先生をきっかけに法然上人にも注目!
さて、今回は法然上人をモデルとする「忍たま乱太郎の土井先生」があまりに人気のために、調べてみました。
30年を超える長寿アニメの人気キャラクターの土井先生が、まさか法然上人をモデルにしていたとは知りませんでした。映画『劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』は小さいお子さんから、かつてアニメを見ていた世代も楽しめると評判なので、興味があればぜひ映画館に足を運んでみてください。
今回の映画のヒットで、土井先生から法然上人についても興味を持つ人が一人でも増えるといいなと思っています。