みなさん、突然ですが「仏像」はお好きですか?
仏像は仏教の教えを、私たちに伝えてくれます。
貴族が政治の中心だった平安時代は、たおやかでふくよかな仏像が多く作られました。その後、鎌倉時代に移り武士の時代になると、筋骨隆々とした仏像が人気を集めるようになったのは有名な話です。
仏像を注意深く観察すると、宗教観はもちろん当時の世相や雰囲気まで伝わってきます。 地域性や時代ごとに流行があるのもおもしろいですね。
仏像はただの美しい彫刻ではありません。それぞれの仏像が持つ深い意味や象徴を知ることで、私たちは仏教の教えに一歩近づくことができます。この記事では、仏像の中でも特に重要な「如来像」と「菩薩像」に焦点を当て、その違いや特徴について詳しく解説します。
仏教において最も尊い存在「如来像」
如来とは?
如来(にょらい)は、仏教における最高の悟りを開いた存在を指します。 仏教の教えにおいて、如来は悟りを完成させた者であり、完全な知恵と慈悲を持っています。 如来の名称は、「来たるべき者」や「真理に至る者」という意味を持ち、その存在は仏教徒にとって究極の理想とされています。
もともとは、釈迦如来(しゃかにょらい)、つまり釈迦牟尼仏(お釈迦様)の像を指して「如来像」としていましたが、後に阿弥陀如来や薬師如来など、多様な如来像が作られるようになりました。
主な如来像
- 釈迦如来(しゃかにょらい)
歴史的な釈迦牟尼仏(お釈迦様)を表し、仏教の創始者としての位置づけです。釈迦如来は、悟りを開き、人々に教えを広めた実在の人物です。
- 阿弥陀如来(あみだにょらい)
西方極楽浄土の主であり、無限の慈悲を持つ如来です。阿弥陀如来は、極楽浄土で信者を迎え入れ、救済すると信じられています。 浄土宗の寺院には阿弥陀如来像があります。
- 薬師如来(やくしにょらい)
東方浄瑠璃世界の主であり、病を治し、健康と長寿をもたらす如来です。薬師如来は、医薬の仏として信仰されています。
- 大日如来(だいにちにょらい)
宇宙の根源を表す如来で、密教における中心的存在です。大日如来は、すべての如来や菩薩の根本的な存在とされ、その姿は華やかで威厳に満ちています。
如来像の特徴
如来像は、悟りを開いたお釈迦様の姿をモデルにしています。 その姿は非常にシンプルで、アクセサリーや装飾をつけないのが特徴です。
基本的に、不要になったボロ布で作られた糞掃衣(ふんぞうえ)をまとっています。
大日如来だけは例外で、冠をかぶり、アクセサリーを身につけた王子だった頃のお釈迦様の姿をしています。
如来像には次のような特徴があります。
上記以外にも、仏像には三十二の優れた身体的特徴があります。
皮膚が金色、髪の毛が青い、など仏像で表現できるものから歯が40本ある、舌が顔より大きい、最上の味感をもつ、手には水かきがある…など、ふつうの人とは違う超人的な特徴がたくさんあります。
きらびやかなお姿「菩薩像」
菩薩とは?
菩薩(ぼさつ)とは、如来になるための修行をしている存在です。 菩薩は、あえて悟りを開かずに私たちと共にいてくださり、苦しむ人々を助けるために活動しているとも伝えられています。
菩薩像の特徴
菩薩像は、さとりを開く前のインド貴族の王子だったお釈迦様の姿をモデルにしています。そのため、髪を高く結い上げ、冠をかぶり、ようらくや環輪などのアクセサリーを身につけ、きらびやかで華やかな姿をしています。
菩薩像の服装は、多くの場合、腰下に巻きつけた布「裳(も)」と、左肩から斜めがけにして垂らした「天布(てんぷ)」が特徴です。
菩薩は、さまざまな衆生(生きとし生けるもの)を救済するために活動しています。また、必要に応じてさまざまな姿に変化することができるとされています。これは、菩薩の慈悲心が無限であり、どのような状況でも衆生を救済するために変化できることを示しています。 そのため、実にさまざまな姿の菩薩像が作られてきました。
みなさんも目にすることが多い菩薩像を5つご紹介しましょう。
主な菩薩像
- 観音菩薩
観音菩薩像は、その慈悲深い救済の力を象徴するために、さまざまな姿と持ち物で表現されます。千手観音の無数の手、十一面観音の多様な顔、如意輪観音の宝珠と法輪、白衣観音の清浄な衣、馬頭観音の力強い姿など、それぞれの特徴が観音菩薩の多様な救済の力を示しています。
- 勢至菩薩
勢至菩薩は智慧の象徴として、優雅で品格のある姿で表されることが多い菩薩さまです。 智慧の力とともに、慈悲と高貴さを表現するために、貴族のような衣装をまとい、宝冠や宝飾品を身につけています。観音菩薩と対になり阿弥陀如来の脇侍(わきじ)として三尊像として崇められます。
- 文殊菩薩
智慧を司る菩薩として知られています。「三人寄れば文殊の知恵」のことわざの”文殊”とは、文殊菩薩を指しているのは有名ですね。文殊菩薩像はその深い智慧と勇気を象徴するために、さまざまな姿と持ち物で表現されます。獅子に乗り、手には智慧の剣を持つ姿が特徴です。獅子は勇敢さを、剣は知恵を象徴し、煩悩を断ち切る力を示しています。また、経典を持つ姿も多く、仏教の教えを広める役割を表現しています。
- 普賢菩薩
白い象に乗る姿が特徴で、象は力強さと穏やかさを象徴しています。普賢菩薩は蓮華や宝珠を持ち、修行と慈悲の行為を示しています。また、経巻を持つ姿もあり、仏教の教えを守り、実践することを表現しています。
- 地蔵菩薩
優雅で貴族的な装いが多い菩薩像の中で、地蔵菩薩像は剃髪し錫杖(しゃくじょう)を持った僧侶のような親しみやすい姿をしています。 六道すべての衆生を救うとされる菩薩として、特に地獄道の衆生を救う役割を担い、子供や亡者の守護者としても信仰されています。
私が好きな仏さま
仏像に興味を持って、鑑賞していくと「この仏さまは好きだな」という、推しの仏像が出てくるものです。雰囲気やたたずまいのどんなところに魅力を感じているのかを考えることで、仏教への興味がわいてくることでしょう。
私の推し仏像は、仙台の若林区新寺にある阿弥陀寺さんのご本尊の阿弥陀如像が好きです。
伊達家から寄進されたご本尊で大変立派なお姿をされています。
仙台三十三観音霊場の17番札所でもありますので、御朱印を集めている方は、お参りしてみてはいかがでしょうか?
一般に公開されていないお寺には、「見学させてください」ではなく「お参りさせてください」とお願いするのがマナーです。お寺の都合がよければ、お参りさせてくれることでしょう。お参りした後は、感謝の気持ちをこめて少額でもよいので賽銭箱に納めましょう。
仏像は博物館や美術館、そして日本中のお寺に納められています。「仏像巡り」を趣味にすると、旅に新たな目的ができるのもいいですね。
気軽に国宝の仏像を閲覧できるe国宝もおすすめです。
ぜひ、奥深い仏像の世界をのぞいてみてください。
まとめ
今回ご紹介したような点に注目していただくと、仏像と対面したときに仏教の教えや信仰に対する理解が深まり、身近に感じることができるでしょう。
如来像は悟りを開いた静謐な姿を、菩薩像は華やかで慈悲深い姿を表現しており、それぞれにふさわしい姿をしています。
「私のすきな仏像」を語れるようになると、あなたも立派な仏像ファンです。 お寺をお参りする際や美術館などで仏像を拝見される場合には、その美しさと姿に表現された深い意味に触れてみてください。